ピルロ自伝、「我思う故に、我蹴る。」を紹介。ミラン、ユベントス、イタリア代表で一時代を築いた天才MFピルロ。彼のピッチ外に迫った渾身の一冊です

書籍

ピルロと言えば、ミラン、ユベントスでセリエAやチャンピオンズリーグで優勝し、イタリア代表としても116試合に出場しW杯優勝も経験した、正真正銘の伝説的なプレーヤーです。そのプレーと言えば、ピッチを上から見たようなパスでゲームをコントロールし、相手が寄せてきても、その技術力でボールを奪われない、テクニシャンな選手です。画面からはその技術力の高さから、クールにプレーしているように見えていました、私がこの本を読むまでは。

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この本で最初に感じたのは、かつて見ていたピルロとは違うピルロでした。感じた違い、この本から得たピルロの印象は①強靭な精神、②お茶目な性格、③真っ直ぐな気持ち、④繊細が大きく挙げることが出来ます。これからその4点について解説したいと思います。

①強靭な精神

ガットゥーゾがピルロについて、「彼を見てると自分をプロサッカー選手と言っていいか分からなくなる」と述べています。イタリア、ミランのレジェンドからそこまで言われるピルロ、もちろん若い頃からその天才ぶりは遺憾なく発揮されていました。しかし16歳で当時所属していたブレシアのトップチームの練習に入ったとき、自分の倍の年齢の選手を4回も抜いてしまいました。そして抜かれた相手(年上のチームメート)は、どう見ても悪質なファウルをしました。またその他チームメートからもパスも全く来ませんでした。しかし当時の監督はピルロの才能を高く評価しており、チームメートへどんどんピルロを中継してゲームを組み立てろと指示をしました。そしてピルロ自身もパスをくれないならなと、自分でボールを奪ったり、偶然自分のところに転がってくるボールを上手くいなしていきました。そして監督の支えもあり、徐々にチームメートから信頼さえるようになり、自分にボール集まるようになりました。

自分の才能を疎まれ、悪質なファウルを受け、パスすら貰えない日々が続けば、ふつうならサッカーを嫌いになったり、投げ出したくなるはずなのに、ピルロはそれを努力と決して立ち止まらない気持ちで乗り越えていきました。強靭な精神力で弛まない努力を続けて行動していった結果、今のピルロが存在し、画面からは決して分からない一面を見ることが出来ました。

②おちゃめな性格


本書ではピルロとプレーしてたチームメートが数多く登場します。そのチームメートとのエピソードでは、彼がイタズラをして笑うお茶目なシーンがたくさん描かれています。


例えばイタリア代表、ミランで共に中盤の底でプレーしたガットゥーゾとは、これまたチームメートのデロッシと消化器を彼にぶちまけて、ガットゥーゾにボコボコになぐられたり、彼の発した言葉について冗談を言うと、仕返しで昼食に使用していたフォークで軽く足を刺され(ナイフはガットゥーゾが手に取る前に奪えたが、フォークは無理だったらしい)、試合を欠場した(公式の発表は筋肉の疲労による離脱と公表)、またネスタに高速で走ってるときわざと道を間違えさせネスタを慌てさしたりと、いつもプレーしてるピルロとは異なる一面を見ることができます。

またたくさんのジョークも本書では登場し、私が思わず笑ってしまったのは、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント、ファーストレグでミランは4-1で勝ち、勝ち抜けがほぼ確定し、ミランが負ける確率は「ガットゥーゾがイタリア文学の学位を取得するのと同じくらい低い」と述べており、上記のフォークを刺された際もガットゥーゾの発言について冗談を言っており、彼のイタリア語に対して相当からかっていたことが分かります。

その他ユベントスでプレーしたマトリやブッフォン、イタリア代表のチームメートのバロテッリやデロッシなど、たくさんのチームメートとのエピソードが語られており、どれもとても面白いので、興味を持って頂いた方は下のリンク先からぽちってみてください。

③真っ直ぐな気持ち


彼はとにかく試合に出場し、試合に勝ちたい、プロ選手なら当たり前かもしれないが、そんな気持ちは彼も十二分に持ち合わせています。例えば彼はウォーミングアップが嫌いです。なぜなら対戦相手であるレアルやバルサ、国内ではローマなどの強敵と試合ができるのに、それを待たされてる、彼に言わせればイタリアのスーパーモデルがヌードで目の前に立ってるのに我慢させられてる、そんな気持ちだと、彼は述べている。ここから彼がいかにサッカーが好きか、試合でプレーしたいかを見て取れるます。もちろんまたウォーミングアップの重要性も理解しています。さらに練習もとことんやります。彼の代名詞であるフリーキックは、当時の世界No.1フリーキッカー、ジュニーニョ・ベルナンブカーノのプレーを何度も見て、練習し、ボール拾いの係に疎まれるくらい明後日の方向に飛ばしながらも練習して習得したと書かれています。さらに本書の最後には、日本代表選手へのアドバイスとして、「ただ練習あるのみ」記されています。ピルロのひたむきな努力や試合へのモチベーションなど、サッカーに対する真っすぐな気持ちが書かれています。

④繊細


ピルロはイタリア代表がドイツW杯で優勝したとき、決勝の最初のPKキッカーに選ばれました。ピルロほどの選手なら数々の重要な場面でのPKも経験しているが、このときばかりは違い、ハーフウェイラインから歩く50mでどこに蹴るか、右?左?真ん中?、様々なことが頭を巡っており、まずか50mの距離が数時間にも感じたと書いています。結果はフランス代表のGKバルデスが横に動くタイプのキーパーだったので真ん中の上に蹴っています。決勝の第一キッカーで真ん中にけるという精神力を見せながらも、裏ではいろいろな考えがめぐっていたと等身大のピルロの姿が描かれています。またピルロはイタリアサッカーの危惧も書かれており、それは八百長や人種差別である。特に人種差別ではチームメートがたくさん被害を受け心を痛めており、なぜ同じ国の人を罵るのかと、なぜ平和なイタリアで護衛をつけながら移動しなければいけないのかと、同じイタリア人とし疑問を持ち心を痛めてるピルロがいた。お茶目なシーンや真っ直ぐな気持ちにも通じるところですが、チームメート、自国を思い、自分の第二の皮膚は青色だと言うほどイタリアを愛してるピルロがそこにいました。


この本では画面からは伝わらなかった等身大のピルロがそこにいました。そのピルロも努力をし、悩み、仲間と国を想い、そして成功した姿が描かれており、自分の知らなかった一面を知れて、またサッカーが好きになるそんな一冊になりました。またピルロはインテル、ミラン、ユベントスなどでプレーしていますが、少し運命が違っていたら、スペインの白いユニフォームであったり、もう一つのスペインのチームのユニフォームを着ていたかもなど、裏話なども描かれていますので、興味持った方は一度是非読んでみてください。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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